第21回クリエイティブナイトレポート

<クリエイティブナイト第21回>

第21回クリエイティブナイト「デザインと革新」のゲストに、NOSIGNER代表 太刀川 英輔さんをお招きいたしました。

太刀川さんは、東京都発行の防災ブック「東京防災」やJR東日本グループの地域再発見プロジェクト「おやつTIMES」などソーシャルイノベーションデザインで注目を集めています。お客さまを巻き込みながら会場全体でデザインの可能性について考えるなど太刀川さんらしい、盛り上がる夜となりました。

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●太刀川流アイスブレイク「チェックイン」からスタート。

太刀川:会場で隣り合わせになった人同士が数分間、自己紹介と今日聞きたいことをディスカッション。ここに集まった人たちは多分、同じものに興味を持っていると思うのでどんなことを聞きたいかを受け取ってからこの会をスタートさせたいと思います。その方が僕も期待に応えられる精度があがると思うので!

<お客さまからあがった本日のお題>

「デザインの可能性(デザインとは何か?)」
「領域を超えるためのコツ」
「多様な人格」
「時間とお金」
「ブランディング論」

●「デザインの可能性(デザインとは何か?)」

太刀川:みなさん、デザインの語源を知ってるでしょうか。
「designare」ラテン語で「記号化する」という意味です。つまりデザインは、形に関わる仕事なんですね。
でも、よいデザインって形の話かどうかはわからないですよね。形ってそもそも何でしょう?見えるものはすべて形ですが、すべての形には理由があります。
デザイナーの仕事というのは、形とその理由を往復しながら、より強い理由を持った形を導くことだと僕は考えています。正確に言うと、「理由」と繋がる。理由だけじゃなくて、理由の先にある「関係」と繋がる。
例えば、それによって人との関係が生まれるとか、人が感動するとか。見えないところで紐付いている理由が促す関係が大事だと思っているんです。
形は「理由の関係」のためにあるから、「よい関係性を導く」形を作ることがデザインだなと。
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形を通して関係をよくする=デザインがよい状態
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僕らがデザイナーとして成長するには2つ。
1つは形がうまくなること。これは技術の問題。
もっと大事なのは、形や技術を何に使うのか?ということ。
例えば都会において、黄色と黒のストライプはエマージェンシーの象徴なんですね、立ち入り禁止とか。それって形の記憶が現れていて、それを通して様々な関係を誘発するデザインなわけです。そんな発見を日々の中ですることができます。見つけたとき、なぜよいと思ったのかを考え直すことが大事ですね。

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●太刀川さんの考える、イノベーションとは?

太刀川:よいデザインにはイノベーションがいります。
イノベーションとは「新結合」のことです。「技術革新」と日本語訳されてしまいおかしなことになっていますが簡単に言うと、カレーうどん、みたいなものですね(笑)。カレーとうどん。新しいものが結びつくこと。結びつくのは形なんだけど、新しい関係性ができるわけです。
僕は、グラフィック、プロダクト、ブランディング、建築設計、といろいろなことをやっていますがこのいろいろを通して一体何がやりたいかというと、今の世の中、いろんなところに閉塞感があると思うんですね。このままいくと惰性的な未来になる。
それが欲しくないとすると、別の未来に向けていかなくちゃいけない。いきたい方へいくためにデザインを使う。横穴をあける、横櫛を通すということをデザインでやりたい。そういうことを、僕はソーシャルイノベーションと呼んでいます。
東日本大震災が起こったとき、すぐに「OLIVE」というウィキペディアのようなたくさんの人が投稿する情報データベースを作りました。とにかく実験して、形を作って、こういうことあるかもよ、と時代を挑発することができればそれはデザインだと思っています。
すごくメジャーなところにマイノリティを作っていく力がデザインにはある。形で示すことで、世の中に別の生き残り方がみえてくる。だからデザインは重要だと思っています。デザインをどう使うか、という意味ではクオリティをあげたいけれど、技術が上手い人は世の中いっぱいいますよね。ただ、デザインを何に使うか、というところでは先鋭的でありたいです。僕がどれくらい社会に貢献できているかはわからないけど、デザインで一緒に波を作っている感覚です。

●「領域を超えるためのコツ」

太刀川:これね、超えたいですよね!僕も常々超えたいと思っています。
実は領域を超えるのはそんなに難しいことではなくて、絶対にやらなきゃいけないことをちゃんとやるってことが大事です。
例えば、和菓子屋さんなら菊練りできるようになる、とかそういうこと(笑)。デザイナーならフォトショ、イラレ使えなきゃだめ、って単純なことです。
領域を超えたい人が間違えちゃうことはね、いろいろ手をつけ始めてみちゃう。それはいいんだけど、どれもこれも平均点以上やることをデフォルトにしちゃっていたりする。それはあまり意味がありません。
僕はね、やりすぎる方法を知っているんです。
領域を超えるには、とにかくここの分野を掘るぞ、と決めたら半年とか一年はディープに追うことが領域を超える近道です。なぜならグラフィックを学んだあとにプロダクトの図面を描くことは意外とできます。一個の分野を追うと他の領域との接続部分が見えてくるんですね。
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領域を超えるには=一点突破
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そういう意味では、ユニークな一点突破をおすすめします。
いきなりグラフィックで突破とかは難しいです。まだ広い。すごい人はたくさんいますしね。だからグラフィックを分けてみましょう。例えばフォント。でもフォントで詳しくなるのも難しいかも。じゃあ、活版印刷のフォントにしぼったらどうか、とか。
「何をやりたいのか」を減らしていきましょう。点で追っていく、それがセルフブランディングっていうやつかもしれないです。たくさんのことをやるんじゃなくて、「これをやる」ってことを先鋭させていくと周りから見てもわかりやすくなったり、形も先鋭になっていきます。掘り込んだ点が増えると横の接点が気になってきます。
料理で世界一は取れないけど、味玉なら取れるかも、とか。味玉いけたならメンマやってみようってなって、そうするとラーメンができるようになったりね。そんな構造を頭に描いてほしいんです。
これは分野だけでなく人にもいえることです。
この領域いいなと思う分野の中で、この人すごいな、という人を数人見つけて頭の中で分解してみてください。この人は一体何ができる人なのか。何がすごいのか考える。人脈がすごいのか、技術がすごいのか。人はあらゆる要素で構成されているからね。分解しないとあこがれで終わってしまいます。この人すごい!という感想だけになってしまうと、俺とは違う、となるだけで前に進めないんですよね。分解してみてください。

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●「多様な人格」

太刀川:これは、ディレクターとデザイナー両方をする立場としてそれぞれの人格についてという質問だったと思うんですけど。
僕は選手兼監督なんです。デザイナーでもあるしディレクターでもある。
僕にはゴールが見えているのでそこまでのステップは早いですが、多くのことを僕より上手い人たちに頼っています。つまりね、ゴールの仮説ができるとディレクションがうまくなる。向かうべき方向がわからない人にはディレクションできません。プロジェクトに仮説を立てるという癖をつけることと完成に至るためにすること。それを両方できないとだめですね。
ディレクターに絶対に必要なものは、誰かの視点、相手の視点に立てるか、ということです。
デザインの仕事にはいろいろな人が関わっていますよね。飲み物だったら、ボトルのメーカー、製造、パッケージ、印刷…。制作については、デザイナーはわかっておけよという話なんですけど、ここから先はディレクターが知っておかなきゃいけない話です。
それは、「作ってる人はどうなの?」「飲む人は何が幸せなの?」というようなこと。
プロジェクトに関わる人たちは大勢いるけれど、どんな人たちがいるんだろうと想像すること。その相手というのは、友達じゃないからわからないですよね。プロジェクトの様々な関係者としゃべることがまず大事です。あの人の悩みはあの人の悩みと似てるなぁ、と重層的にストックしていくとだんだんわかるようになります。「これやっておいて」の裏にある気持ちをわかるようになることがデザインディレクターになることです。
作り手は作ることに一生懸命になりすぎます。
本当によいものなのか、ということに無自覚なんです。個人の「よい」には忠実かもしれないけど、相手をわかるには相手と話すほうが早いですよね。わからないときは聞いたほうがいいです。
作り手基準の「よい」を押し付けるのはだめ。
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ディレクターに必要なこと=ゴールの仮説を立てる癖をつける。相手の視点に立つ。
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マーケティングを広げていくことにも繋がるので、自分と直接関わっていない人たちと関わっていくことがブランディングにおいて大事なことです。
デザイナーの前にその領域のものを買うユーザーになれるかどうか、というのも大切ですね。売れるという確信ではなくて、買うというエンゲージメントを関係することができるかどうか。デザイナーじゃなくて普通の人の立場に立って、本当に買うことができるのか。それとデザイナーとしての表現をうまくやるのを両方できるのか。それもやはり相手の立場に立てるかどうかですね。自分はユーザーであり、提供者であるという意識。
よいデザインディレクターは、よいものを使い、よく遊びます。そのユーザーになろうという意識がとてもあるんです。意識の高い消費者たりうるか、それはすごく問われますね。

●「時間とお金」

太刀川:デザインへの時間の掛け方ですが、先程の話と一緒です。
自分の中でよさの定義がはっきりしていると手数が少なくゴールに辿り着けるので時間が短く済むんですよね。あとは文脈を理解していると選択肢が減りますね。次にやることがわかるから。文脈の理解が浅いかもしれないと思ったら、その歴史や源流を調べたほうがいいですよ。発想の原点を助けてくれるかもしれない。デザインするときに、「新しさを毎回出す」と思っているけれど新しいかどうかっていうのも文脈を理解していないとわからないよね。
今のクオリティになるために時間をかけているとしたら勉強不足ですね。クオリティを追うために時間をかけたほうがいいです。瞬発力が身につきます。技術の話ではなくて、クオリティを追うために自分にやれるあらゆることがわかっていると、様々な局面で「役に立てるかもしれない!」と提案できる可能性が上がります。自分にできることを整理している人のほうが営業ができるんですね。

「デザインの可能性を拡張すること」それが僕の一番の目的なので、初めはお金は入ってきませんでした。一日に自分はいくらの人なのか決めなさい、と人に言われたことがあって。ちゃんと自分の価格を決めて見積もりを出すとだんだん通るようになってきました。
そうするとわかってきたのは、どうやらこのスキルは役に立つらしいということですね。役に立つとみんなが見る景色が変わっていきます。プロジェクトの利益発生の一端を担えているのであればきちんともらえるようになります。

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●「ブランディング論」

太刀川:僕は関係性重視。
例えば、「おやつTIMES」。ステークホルダーの整理ということにこだわりがあります。経営者はもちろん最重要視するひとりです。ブランディングをうまく機能させるというときに、経営者とプロジェクトを動かす人たちの間には共感軸が必要です。どうやってそれを生み出すかを考えます。
「おやつTIMES」は、東北支援のプロジェクトで小袋のお菓子です。中身は地域の人しか知らないようなお菓子がそのまま入っています。「おやつTIMES」を各地のJRバスの懐に入れてくれれば、都内に運ぶよという仕組みです。
「TIMES」というくらいなので雑誌の形状をしていて、表面は生産者応援情報。裏面は目的地情報、ぜひJRつかってね、ということです。
こんな感じで、シナジーをもたらすプロジェクトにする。ブランディングにおいて大事にしていることです。何のためにあるのか、という柱の部分ですよね。シナジーをまくためにお菓子に何ができるのか。
目的を決めること、整理することが大事です。
そうするとクライアントのオーダーからもっと大きなビジョンが生まれます。
大きな目的は小さな目的を吸収できるので、みんなの思い入れを整理して一方向へ向かわせる役目を担うことができるんです。僕はボトムアップにみせかけたトップダウンが理想的だと思っています。その構図に気づいていないか気づいていてみんなが感謝しているような状況かな。

●「NOSIGHNER」ということ

太刀川:僕はね、いいデザイナーになりたかったんです。
思考の癖として理想から逆算してくる癖があって、じゃあ「いいデザイナー」ってなんだと思って。最高のデザイナーってどんなんだろうって仮説をいくつかたててみたの。
そしたら、偉大なデザインは誰が作ったのかわからないわけです。そういうことってすごくデザインの本質をついてるんじゃないかと思って。だから名乗らないでおこうと思いました、「NOSIGHNER」。
形を作るよりも、関係を作るほうが偉大だと思っていたしね。関係を写し取れるくらいに形を純化させていくって難しいですよね。いろんな出したくない線が出てきちゃうのを出さないっていうのは技術で、表現をしないっていうことはどういうことなんだ、と。
表現しない、名乗らない、けどデザインは残る。デザインが見えなくなってしまえばいい、と思うんです。消えないんだけど、あれもあなただったんですね、という感じ。
どことどこの橋渡しをデザインでやるか、新しい領域をどう作っていけるのか、ということに意識が向いています。デザインの足りない領域でデザインを武器にしていったら新しい市場やマーケットができるんじゃないかなと思って。

●太刀川さんにとって、デザインとは

ひとつは、デザインとは何かということを形式知化すること。
これは、デザイン教育者としてやっていることですね。デザインの構造化。
自分でわかるためでもあるし、わかってもらうためでもあります。
そしてもうひとつ。
それでもって、デザインを社会に機能させること。そして、デザインの可能性を拡張すること。
デザインされていないことをデザインして、できてない関係性を繋いでいきたいと思っています。

●ありがとうございました!

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