第20回クリエイティブナイトレポート

<クリエイティブナイト第20回> 

第20回クリエイティブナイト「これからのデザイン領域」のゲストに、デザイナー/エンジニア/ストラテジスト 久下 玄さんをお招きいたしました。

様々な肩書きを持つ久下さん。そのお仕事の幅はジャンルを問わず、「デザイナー/エンジニア/ストラテジスト」という言葉をただ聞いただけでは理解しきれない広義の意味を持つ活動でした。
とどまることのない久下さんのお話から、これからのデザイン領域について考える熱い夜となりました。

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●まずは久下さんの「デザイン」のとらえ方を教えてください。

商品やサービスの有り様を考えてかたちにすることを「デザイン」ととらえています。
プロダクトやビジュアルなどデザインがわけられていますが、
本来のコアは手先の器用さではなくて、ものごとのコンセプトや有り様など中心軸をとらえて、いかに構造化するか、いかに世の中にわかるようにかたちにしていくのか、が本来のデザイナーの職能ですね。

●「エンジニア」「ストラテジスト」という肩書きもお持ちですね。

どちらの領域も広域化してきています。
ソフトウェアの分野で例えれば、誰かが考えたものを指示されたそのまま再現する人、つまりソフトウェアをただ書くだけの人はコーダーと呼ばれ、デザイナー的感性のあるエンジニアと区別されるようになってきています。エンジニアも事業開発の人も、デザイナー的思考が合わさった人が求められている時代なので、私も自然とそういう役割も担うようになりました。
デザイナーと同じように「エンジニア」は、デザインを社会で実現するための手法を探したり考えたりして実装する人、ととらえています。
工学的な視点で、なんらかの思想を社会実装するための手段を探す人、かな。
同じようなことが、ビジネスサイドにも言えて、誰かが企画したものを売るだけの人は、ただのセールスマンです。考える営業マン、事業開発する人、どういうものが売れるべきか、どういうふうにPRするべきかを自分で考えられる人が重要となっています。
ものごとには世の中に出るまでいくつかフェーズがあります。
僕は、ビジネスの視点が必要なものにデザイナー的な視点を掛け合わせ、ストラテジー(戦略)をたてることでクライアントの問題を解決することをメインに仕事しています。

▼久下さんが大切にしている流れ
1)コンセプトデザイン
2)ビジネスデザイン
3)プロダクトデザイン

▼それぞれのフェーズでの深堀
・文脈:どういった存在にするのか。未来への道筋を作る大事な領域。どういうものを作るべきか。
・構造:どういう仕組みにするのか?どういった組みあわせがいるのか。
・具現:どういう出来栄えにするのか。

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●手がけられたお仕事を教えてください。

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いろいろあるのですが、まずはこちら。
COTOREES [neurowear, 2016]
http://neurowear.com/projects_detail/cotorees.html

GUIの次といわれる、ボイスUI(VUI)のロボットです。
課題として、すごくたくさんの機能が搭載されてしまってスマホが複雑化してきています。
一般的なプロダクトデザイナーはこういうプロダクトはあまり作らないと思うんですけど。
これはスマホの中のひとつひとつの機能を取り出してそれぞれの体験がアイコニックになるように作っています。
つまり単機能プロダクト。
例えば、翻訳だけをしてくれる鳥とか。
ツイッターのタイムラインを読み上げる鳥とか、ユーザーシーンに合わせて音楽をかけてくれる鳥とか。あと天気予報だけ答えてくれる鳥とかがいます。

最初にneurowearのなかのさんから「インバウンド需要の中、鳥モチーフで翻訳してくれるものをつくりたい」というお題をいただいたんです。
そこで、翻訳だけでなく、様々な機能をスマホの外に出して、スマホレスで使えるものを作り出したらおもしろいんじゃないか、と提案して進めました。
僕はハードウェア、ソフトウェア部分のデザイン&エンジニアリングを担当しています。

人間が質問を投げかけて鳥が答えてくれる、このような体験の実現には作法や挙動のデザインがすごく重要です。雑音や普通の会話には、鳥は反応してはいけないわけです。それなら反応するべきフックになる音声コマンドはどうするか。回答するまでのソフトウェア処理待ちの時間にどういうふるまいをしたら人間が不安がらないか等、ロジックや根拠がいろいろあるのです。
そして、愛着が持てるものを作ろうということでキャラクター独特のシズル感というか、かわいいキャラクターを作れる人、ということで、ポンデライオンをデザインした堀内さんに仲間に入っていただきました。

こんな感じで、あやしいデバイスをたくさん作っています(笑)。
ほかには、脳センサーのプロジェクトだったり、人工知能を研究しながらデバイスを作ったり。
おもしろいところでいうと、自転車ベンチャーと、今までと違う漕ぎ方で時速60kmも出るプロダクトデザインをしていたりします。

●Coineyについても教えてください。
Coiney
https://coiney.com

コイニーは、スマホやタブレットのイヤホンジャックに専用リーダーを差し込むと、カード決済ができる金融サービスです。
創業当時は3人。今では40人くらいまでの組織に育ってきました。
もともと、店舗にとってクレジットカードの仕組みを導入するのってすごく大変だったんです。
手数料がお店ごとに違ったり。そもそも手数料も高かったし、あの機械も高かった。
もっと安くサービスを作って、どんなに小さな事業者でも低い手数料でやれるようにしたかった。
システム側がリスクをとればいいんですよね。今、コイニーは決済手数料3.24%でやっています。
ユーザーもかなり広がってきています。
僕はプロダクト、あと独自にハードウェア作ったり、アプリケーションも書いていました。
ほかには、デザイナーとエンジニアのトップをしていたり。
そうなると、会社の人たちがどう動くか、というカルチャー構造やミッションとかも作ったりもしていましたね。
金融のビジネスだから、いろんな肩書きの人たちが関わっているので風通しがよくなるようにオフィス作ったりとか。

●様々なジャンルもですが、仕事内容も多岐ですね!

そうですね。様々なジャンルを幅広くやっている、というのが僕の仕事のスタイル。でも今後、こんな感じのデザイナーはガンガン出てくるんじゃないですかね。僕は最近は、いわゆるデザイン業界よりスタートアップクラスタのほうが交流が多いかもしれないです。

●そもそもデザイナーになりたい、と思っていたのですか?

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デザインの大学に行きたいとは小学校中頃から思っていましたね。将来仕事は何をしようかな、と。
子供の頃に親戚のおじさんに、ものづくりが好きなら工業デザイナーという仕事があるぞ、と教えてもらって。それは、家電作る人で、専門職だからなるためにはデザインの学校に行かなくちゃいけない、というわけでデザイン学校にいくことは決めていたんです。
東京造形大学では、エッジのたった思考を仕込まれましたね!
その後、家電メーカーに入って白物家電のデザインをしていました。
最近の世相はこうだから、トレンドはこうだから、とかいろんな理由をつけたデザインが当時多くて。
「それで売れる?」みたいな、そういうことを口に出すタイプだったから嫌がられていました(笑)。
家電って、中身の構造には理由があって、最もおさまりがいい感じになるようにエンジニアが頑張ってやっているんですね。
そういったエンジニアが出してくれたものを、どう素直に形にするのか、みたいなことがやりたいと思っていました。

●なぜ独立を?

直属の課長と部長が僕を自由に泳がせてくれていて、やりたいことは全部やらせてもらえた。上司に恵まれたんです。会社が嫌いになったとかじゃなくて、その場所でやり尽くしたのでやりたいことなくなっちゃったんです。
最後の方は、エンジニアにこの方がいい、と伝えるのに部分試作を自分でやるようになっていました。
デザイナーとエンジニアをブリッジする。
そういった問題が他の会社にも結構あったんですね。それで自分の仕事には需要があるかなと思いました。

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●お仕事はどんな感じで依頼がくるのですか?

ばっくりと何かできませんか、というオファーも多いです。
これまでの仕事を通して、「こういうことできるんだったら、こういうことできませんか」みたいな流れがメインかな。
おもしろいからやってみよう、と思うか、儲かるか、しか基本受けないです。
どっちでもないやつは自分である必要がないんですよね。僕が生きないというか、他の方の方が上手にやられるだろうな、と思います。

●久下さんは、チームデザインを大切にされますよね。

例えば、「クラウドサービス作りたい、うちにはエンジニアいます」という会社さんに、どんなエンジニア
がいるかを尋ねると、経営者はよくわかってなかったりするんですよね。多くのそういうケースの僕の答えとしては、「そのエンジニアだけじゃ作れないよ」なんです。
エンジニアといっても、様々な専門分野がありますからね。それを具体的に理解してマネジメントできている経営者はかなり少ない。作りたい事業にどんなチームが必要となるか、最初に綿密につくるのが重要です。それが予算やかかる工数にも関わってくるので、マネジメントするということが必要です。
そういう意味でもチームをちゃんとデザインすることがプロダクトやサービスのデザインには重要だと考えています。

●久下さんにとってのデザインに対するモチベーションは?

新しい文脈ができるのがすごく好きです。
みんなが見たことない、新しいおもしろい世界をちょっと見せてくれる仕事が楽しい。
多くの場合、世の中の人が常識的な枠の中でものを作ってしまうのですが、スタートアップとか、
大企業の中でも新規事業とかアグレッシブに取り組む人が増えてきたので、「今の普通」の思い込みを越えたアイデアがいろいろなところでどんどん出てきています。そういう場所で仕事をするのが楽しいです。
デザインであるかどうかは関係なくて、おもしろい話題やストーリーができて、新しいな、おもしろいな、というのが一番おもしろいですね。
人生の一番の敵は「飽き」だと思っているので。飽きないようにしていきたいですね。

●久下さんは、仕掛けていくビジネスマンが知っておかなくちゃいけないものをビジネスサイドでもおさえているし、アウトプットのデザインまでおさえにいっていますよね。
これが本来の垂直統合ですよね、普通できない、えげつないです(笑)。

IT業界の大御所の方が言われていることがありまして。
「面白いことをやりたければバットを振り切れ。世の中の今をかき回すようなことをして、逮捕されるか成功するかの二択しかないくらいの気合でやる」と(笑)

●久下さんが考える、未来のデザイナー像とは?

「思いを貫くこと」。
日本のデザイナーって、あやふやなものでも何となく信じてもらえる立場的なオプションを社会にもらっていると思うんです。
違う分野に対しても素人目線でアイデアを提案することを期待されていたり、しつこく人々のためなんだよと説得できる立場というオプション。
世の中が欲するレベル、一流ではないけど及第点の技術力は誰でも身につくので、表面的なスキルよりも、自分がよいと思うデザインを実現する方法を仕事の中で徹底して貫いていくのがデザイナーかな。

●最後に、久下さんにとってデザインとは?

「考えること」。
それに尽きますね。脳みそで考えるだけでなく、手先でも考えること。
多数決からイノベーションは生まれないですよ。ひたすら考えていくことです!

●ありがとうございました!

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