第 18 回クリエイティブナイトレポート

第18回クリエイティブナイトのゲストは、
JR新宿駅新南エリアの設計を手掛ける建築家、株式会社シナト代表 大野力さんをお招きいたしました。

前半は大野さんによる事例をご紹介いただきながらレクチャー。
後半は弊社代表 西澤との対談で、大野さんの仕事観を堪能する会となりました。

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● 新宿駅、そして商業施設「NEWoMan」の仕事

駅は大勢の人が使う場所なので、安全管理の基準が非常に高く、とにかく規制だらけ。
「これをしてはいけない」どころか「これしかダメ」って状態なんです。
あとプロジェクト関係者の数も膨大で、合意形成のプロセスも非常に複雑。つまり前例の無いことを実現するのが物凄く大変なんです。
例えば今回、コンコースの天井を無垢の天然木にしているのですが、その合意を得るだけでも半年以上かかりました。
そもそも天井に関する本質的なリスクは何なのかという所から解明していって、
こうすればそのリスクは回避できるはずだということを論理的に積み上げて説明し続ける感じです。
当然ながら、他のプロジェクトに比べると思い通りに設計することがとても難しいのですが、
そんな状況の中でどう立ち振る舞えば物事が好転するのかということを、ひたすら勉強しながら楽しんでいた気がします。

NEWoManは、僕にとって初めての商業施設全体の設計でした。
駅ビル型SC、しかも新宿駅直結ということもあって、当然ながらレンタブル比の最大化が求められます。
つまりなるべく多くの面積を専有部に割り当てることになるので、共用部は最低限の通路だけになる。
また専有部は各テナント側で設計するので、その部分は口出しが出来ない。
そんな中でNEWoMan全体の環境を良くするためには、通路を綺麗につくるだけでは難しいと考えて、専有部に対するデザインレギュレーションを綿密に計画することにしました。
それは都市における集団規定のようなもので、場所ごとに各テナントの開口率や高さを制御することで、全体として最適な空間構成を得たいと思っていました。

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● デザインレギュレーション

NEWoManのデザインレギュレーションでは、開口率や高さの規制と共に、「物理的な越境」を促すことを大きな特徴としています。
専有部の天井を共用部に飛び出させたり、共用部の天井を専有部に入り込ませたりして、
両者が越境して領域がオーバーラップする状況をつくっているんです。
共用部-専有部の境界線をズラし曖昧にすることで、「通路とテナント」という二項対立的な風景ではない、ひとつながりの大きな店舗として感じられるようになればと思っていました。
またテナントにとっては、天井を共用通路に庇のように張りのばすことで、共用部を歩く通行人に対する訴求力が強くなるし、またその庇部分への照明設置を推奨していたので、通常リースライン内から照明することで綺麗に光を当てられないファサード面やそこにディスプレイされるマネキン等に、前面から綺麗に照明することが出来るんです。
一方共用部としても、通路の天井と照明を施工する必要が無くなり、コストカットに繋がります。
つまりお互いにとって具体的なメリットがある訳です。
先程の駅もそうですが、自分の思い通りにならない条件や、一見ネガティブに感じられる要素を、なるべく自分のデザインに内包して味方にしていくようなことをずっと意識しながらやっています。

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● 自分を支える、インスタレーションの取り組み

ちょっとお堅い話が続きましたが、インスタレーションとか、純粋に空間の質だけを追求するようなプロジェクトもいくつかやらせてもらっています。
というか個人的な興味・嗜好としてはこっちの方が強いかもしれない。
やっぱりまだ見たこと・体験したことのない空間の状態を発見したいっていうのが昔からずーっとあるんですよ。
それはきっと今後も色褪せないでしょうね。
ただ、社会との関係性ということで考えると、その辺りの活動だけで大きな接続面をつくるのは難しいし、性格として誰かに必要とされたい、誰かの役に立ちたいというのもあるので、まあ個人的な興味とプロフェッショナルとしての社会貢献をうまくバランス取りながらやっていくということなんだろうなと。
あと実は、大きく複雑でお堅いプロジェクトほど、美しさを語れる存在が必要だなって最近思ってるんです。
過去の事例や数値的な正しさばかりが極端に重んじられる状況の中で、当事者たちがその力学から逸脱して新しい可能性を開いていくのってものすごく大変なんですよ。
だからそこに入っていって、数値化出来ないような価値を自信満々に提示するというのはとても重要だし、そう振る舞うことが出来るのは、自分が純粋に空間を信じその可能性を追求しているからだと思います。

●建築家同士のコラボレーション

最近、近い世代の建築家たちといくつかのプロジェクトで協働しています。
ここ数年、設計の依頼を頂いても忙しすぎて断らなければならないということが続いていたので、コラボレーションという形をとればもう少し受け皿を拡げられるのではないかと考えたのがきっかけです。
アトリエ事務所って経営がとても難しいんですよ。スタッフをいっぱい雇っても仕事が来なければやることないし、かといってスタッフがいないと、いざ大きな仕事が来ても対応できなかったり。
あと急にスタッフを増やしても、寄せ集めのメンバーではクオリティ担保出来ないですからね。
それよりも横の繋がりの中で優秀な建築家たちとアライアンスを組んで、状況に応じて流動的に組織を形成出来れば、皆それぞれにとって適切な組織規模を保ちつつ、色々なチャレンジが出来るのではないかと思って。
あとは異文化交流ですね。あらゆる共同体にとって他者の存在って重要だと思うんです。
僕自身、色んなプロジェクトに他者として参画して、他者として当事者には無い視点で提案することに意義がある。
であればsinatoにも他者に入ってもらって、かき乱してもらおうと。
ってまあ口では簡単に言えますけど、実際は色々大変で毎日試行錯誤しながら練習中という感じです。
でも可能性は感じていて、もっとうまくなって拡げていければ、社会的にもすごく価値のあることだと思っています。
小さなアトリエ事務所がもっと社会のボリュームゾーンに入っていけた方が絶対世の中良くなりますよ。

● 大野さんにとって、建築とは?

わからんけど・・・自分の生き方なんでしょうね。自分の能力を社会に還元していく術なんだろうな。
ひとこと、キーワードでいうなら、愛!

(ありがとうございました!)

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